グエムル 漢江の怪物

 なんというか、普通の映画。単純に面白かったとか、つまらなかったとかいう言葉でくくれない微妙な違和感が残った映画でもある。

 日常的な暮らしに、突然、不条理な災難が降り掛かる。
 妻には逃げられ売店の店番すらまともにできないダメダメな長男、大学時代に民主化運動の戦士だったが時代にのれなかった次男、才能はありながらここ一番に弱いため頂点に立てないアスリートの長女。長男と彼に似ずしっかり者の娘は、漢江河畔のちいさな売店を切り盛りする祖父とともに生活している。
 この、家族を襲う災難が〈グエムル〉なのだが、これが〈通り魔〉とか、〈テロリスト〉でも変わらないのではないかと思えてくる。日本の怪獣映画には、おとぎ話的な一種の非現実感がつきまとうのだが、ここにはそれがない。あくまでも限りなく現実に近いところで描こうとしている。登場人物は、人それぞれに見合った分の力しか発揮できないし、怪獣映画にありがちなご都合主義もない。それでもなんとかしようとあがく。それゆえに、この映画は、一種の問題提起的な読みを誘うのかもしれない。(民主化を担った人たちが報われていない、とか、米軍のいいなりにならざる得ない状況、とか)
 
 そうしたこととは別に、一見同じようだがずいぶん違う、というシーンがあって興味深かった。そのひとつが、怪物に襲われた犠牲者の合同葬儀の場面である。ものすごく騒々しい。日本であればこのシーンは水を打ったように静かに描かれる場面なのだが、終始ザワついているし、声高な愁嘆場の集合になっている。監督の意向なのか実際そういう国民性なのかはわからない。見た目が似てるだけに違和感が大きい。他にも、日本だったら、まず、お上の言うこと聞いちゃいそうな所で、黙っていない。そのテンションの高さが、ちょっぴりうらやましい。

 

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映画『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』

監督:クリス・レオン
出演:ジャン・レノ、アーリー・ジョヴァー、ジョスラン・キヴラン

 随所に原作の台詞を折り込みながら、ややこしくなりそうな所は簡単な設定に整理して、映像映えしそうなところを活かし、全体としてサスペンス&アクションといったテイストにまとめてありました。
 結構オシャレなカットなんかもあって、映像は良かったかな。ストーリーは、娯楽映画として後味の良いように後半を大改造!!
 原作とおりだとかなり殺伐としたダークトーンになるはずなのだが、その辺を割り切ってハリウッド映画っぽい大甘なつくりに変更。
 そのおかげで、かなり辻褄があわなくなってしまっています(^^;;。
 それでも、ムダに派手なアクションものと割り切ってみれば、それなりに楽しめました。

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映画「ルパン」

 華やかな映画でした。カルティエが協力してるだけあって、宝飾品がステキ。カリオストロ伯爵夫人が悪女の魅力を炸裂させてました。
 当のルパン君が最初はどんくさいイモにいちゃんにしか見えないのが、話が進むうちにじわじわとカッコ良くなってくるのよね。小学生の頃に読んだルパンシリーズでは、ものすごくカッコイイ怪盗紳士っていう感じだったので、最初はずいぶんと違和感があったんだけど、見てるうちに気にならなくなった。っていうか、意図的に「怪盗ルパンのできるまで(^^;;」にしてあったんだと思う。そういう意味では「バットマン・ビギンズ」と同系列。
 子供向けはほとんど読んだはずだったんだけど、いかんせん遠い昔のことなので、きれいさっぱり忘れておりました。メインストーリーとなった『カリオストロ伯爵夫人(『魔女とルパン』)』にいたっては読んでなかったので、微妙に新鮮な感じで楽しめた。全体の印象としては、まあまあってとこでしょうか。ビデオで見るくらいなら劇場で見た方が良いでしょう。

 序盤の逃走シーンのカメラアングルとかルパンの走り方とかが、どうみても「ルパン三世」のパロディ。フランスでも「ルパン三世」は流行っていたんでしょうか?

 ところどころ「ヴィドック」っぽいカメラワークがあったんで、同じ監督かとおもったんだけど、ちがいました。監督のジャン=ポール・サロメは「ルーブルの怪人」を撮った人でした。
 ちなみに、私は「ルーブルの怪人」けっこう好きだったりします。「ルパン」と「ルーブルの怪人」だったら「ルーブルの怪人」の方が好きかな。
 

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映画「姑獲鳥の夏」

 監督が「帝都物語」の実相寺昭雄と知っていたので、ある程度覚悟はしてました。それでも「D坂の殺人事件」っぽいお耽美映画にはなっているだろうと思って見にいったのだが、こちらの覚悟を上回るダサさでした。インサートカットの姑獲鳥の映像は70年代のテレビドラマ並の安っぽさ。もっとも、その時代の人だからしょうがないっていえばそうなんだけど、少なくとも21世紀の映画観客を納得させられるレベルではないなあ。だって、安っぽい羽つけた女性を黒バックにストリップ劇場みたいなピンクのライティングで撮ってるのよ〜!冒頭でのそのシーン見た時、思わず笑ってしまった。洋物だけどクライブ・バーカーが監督した「ミディアン/死者の棲む街」のNightbreedたちは、丁寧に作りこまれて
いて、キャラによっては美しくさえあったのに比べると、お寒い限り。監督や美術の人間の妖怪に対する想像力や表現力の古さをしみじみ感じてしまった。
 
 腹をくくって見に来たはずなのに、姑獲鳥ダンサーの衝撃で既に帰りたくなってくる・・・。「今日は覚悟して見に来たんだ。がんばれ、自分!!」と心の中で唱えてはみたものの、京極堂登場時の長台詞で、また気力が・・・。新聞のインタビューで京極堂役の堤真一はNGなしで撮れたと自慢げだったけど、必死で言っているといった感じが見え見えで、台詞が自分の言葉になってないません(「デビルマン」の伊崎君じゃないんだからさあ)。わざわざ長回しにする演出的意味もあんまり感じられないし、長回しで使うんならNG出してもう少しちゃんとした芝居してもらってくださいよ〜。
 
 昭和二十年代の雰囲気とか、京極堂の店やめまい坂、薔薇十字探偵社なんかはさすがにいい感じで、カメラワークも実相寺節(?)って感じでよかったのだけど、久遠寺家の内装が貧乏臭すぎます。とてもお金持ちには見えません(TOT)。昔「リッチでなければリッチは語れない」といったCMディレクターがいたけど、その言葉を思い出してしまいました。スタッフのボキャブラリーには「裕福な医院の暮らし」がなかったんだろうなあ。それともうひとつ気になったのが、堤真一の着物の着こなし。夏なのに暑苦しく見えるし(たぶん衣装の選定と着付けの問題かな?)、着慣れてないように見える(これは、彼の問題だろうなあ)。
 
 いろいろ、悪い所を書いてきたけど、もっとも酷いのが脚本です!!単にヘタなのはもうしょうがないかもしれませんが、明らかに言葉が変なのはそれ以前の問題です。「偽善者ぶるのはやめろ」と京極堂は関口君にいうのですが、「それを言うなら善人ぶるのはやめろ」でしょ〜が!文脈的にはそうでないと辻褄が合わないシーンだと思うんだけど。堤真一はその台詞に疑問を持たなかったんでしょうか?
 もう、見ているのが嫌になってきました。それでも見ているのは、覚悟して見に来たんだという歪んだ決意ゆえ(^^;;。そうまですることもないのですが、一応京極夏彦のファンであった(過去形かよ(^^;)私としては人生修行だと思って耐えました。
 
 つらいことの多い映画ですが、いいところもあります。阿部寛の榎木津です。もう、これはサイコーです。彼が出ているシーンは楽しめます。今ひとつ出番が少ないので、彼が現れるまで耐えるのが大変ですが。
 阿部寛と別の意味で感心したのが、木場修太郎を演じた宮迫博之。CASSHERNの時の彼の芝居が印象的だったのでそれとはまるっきり違うキャラをきちっと演じてて「うまいなあ〜」としみじみ思ってしまいました。
 永瀬正敏の関口もいいかもしれません。関口雪絵役の篠原涼子や中禅寺千鶴子役も清水美砂も素敵でした。原作者京極夏彦が出演してたのも楽しめます。傷痍軍人という設定のわりにはやたら福々しいのはナンですが。劇中の紙芝居が水木先生作なのも京極ー水木の妖怪ラインならではといえるでしょう。
 
 脚本家を変えてくれるのなら、シリーズ化する価値はあるかもしれません。堤真一の京極堂はイマイチだったけど、他のキャラはナイスだったのでこれきりなのはもったいない気もするし。監督も別の人の方がいいような気がします。姑獲鳥ダンサーと貧乏臭い金持ちの表現には、思いっきり失望したので。
 
 フツーに楽しむにはかなり難があるし、私としてはいっそのこと最近のJホラー監督の誰かに撮ってもらった方がよかったのでは?と思わないこともないのですが、突っ込みどころが満載という意味では、「まあ、いいか」というタイプの映画でした。

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バットマン・ビギンズ

 駅貼りのポスターがカッコ良かったんで、つい見に行ってしまった。
 超ド級の名門大金持のおぼっちゃまが、いかにしてコスプレ(^^;ヒーローになったか。というのを破綻なく説明しようという努力が感じられるお話。師弟物の風味を取り入れた成長物語としてうまいことまとめてあったと思う。
 ブルース役のクリスチャン・ベールは、『アメリカン・サイコ』のシリアルキラーのイメージが強かったんだけど(ブランドスーツで美女をナンパしては80SロックをBGMに嬉々として美女を刻むあれね)以外にハマった配役だった。ウブイおぼっちゃまと格闘家ヒーローの両面をうまく両立できてたよね。やっぱりブルース程のおぼっちゃまを演じるには、それなりの品格みたいなものがにじみ出てないと・・・。という意味でも良い人選だったと思う。
 キャストでいえば、ルトガー・ハワーが巨悪ではなく小悪党だったのに時の流れを感じてしまった。しかも、顔みてしばらく誰だか思い出せなかったし(^^;;あと、ゲイリー・オールドマン!良かったけど、イイ人の役っていうのがちょっと違和感が(^^;;リーアム・ニーソンのキャラが微妙にスターウォーズの時とかぶってるような気が・・・師匠向きの役者ってことかしら。
 まあ、とりあえず見て損はしなかった。という感じだけど、『コンスタンティン』ほど後の吸引力はなかったかな。
 ヒマラヤの氷河の風景(アイスランドでロケ?)が凄くキレイで、それだけでもビデオじゃなく映画館で見たかいがあったかも。

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