« 雨なのに大旗 | Main | 新幹線に電源 »

「国宝 関屋澪標図屏風と琳派の美」
静嘉堂文庫美術館に行ってきた

会期:平成18年4月8日(土)〜5月14日(日)

二子玉川駅から徒歩20分程度しか離れていないのに、あたりはまるでどこかの避暑地。目当ての静嘉堂文庫美術館は、鬱蒼した木立に覆われた小山の頂にあった。
世田谷区というのは、王子生まれ浦和育ちの私にとって、心理的に思いっきり遠い場所(^^;;。それでも出かけてきたのは抱一様の作品見たさと曜変天目恋しさゆえ。先に言ってしまえば、曜変天目には合えなかった。なぜなら、常設展示などいうものはなかったのだ。
でも、そのかわりといっては何だが、とっても幸せなサプライズが待っていた。

なにはともあれ、内容をピックアップしてみましょう。

メインは俵屋宗達作《関屋澪標図屏風》(国宝)。作品そのものは、現在の私の気分ではあまりピンとこない。とはいえものすごく資料価値が高い作品。全35点+特別出品の《平治物語絵巻 信西巻》と点数的にはあまり多くないれど、琳派の作品群が充実しておりました。

尾形光琳作《紅白梅図屏風》(紙本金地著色金銀泥 二曲一双)
 天真爛漫で雑というか手早い部分がある、というのが私の光琳の絵に対するイメージなのだが、この作品については、のびやかなお坊ちゃん気質よりも職人的な繊細さが感じられる。正直、これを見て光琳を見直しました(^^;;←えらそう)
 左隻に伸びやかに枝を広げる一本の紅梅、右隻には信楽焼の蹲のように小さく身を屈める一本の白梅が描かれている。こうした対比の妙が、一双という形式によってより際立たされている。また、折り曲げられた平面に描かれた梅の枝は、まるでこちらへ伸びてくるかのように見える。
 私は六曲の方がスペクタクルで好きなのだが、この作品を見て二曲一双の良さに気づきました。できるものならお座敷でみたいなあ。

尾形光琳作《桜鹿・紅葉鶴図屏風》(紙本金地著色 二曲一双)
 これは、《紅白梅図屏風》よりも「ゆるい」感じ(^^;です。面白いと思ったのはモチーフの組み合わせかた。
 定石としては「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこえゑきく時ぞ秋はかなしき」ってことで鹿には紅葉を合わせるところなのに、桜を合わせてること。ちなみに、同じ光琳作の軸で《紅葉に鹿図》という作品も出品されています。
 鶴の方は着物の柄では「桜・鶴」の取り合わせはよくあるらしい。私にはその元ネタがわかりませんが、光琳は呉服屋の倅ですからよく知っていたに違いない。
 この定石の組み合わせをいったんバラして「桜・鹿」←→「紅葉・鶴」というセットを二曲の屏風に振り分けた趣向に、私はグっときてしまいました。鹿の隻を見てる時は隣の紅葉が気になり(頭の中のバックグランドには「奥山の・・・」が流れてるから)、反対に鶴の時には桜が気になる。これもある意味一双ならではの遊びだ!と私は断定して楽しんでしまいました。

尾形乾山作《色絵定家詠十二ヶ月花鳥図角皿》(十二枚)
 尾形ブラザースの弟、乾山は京焼のスター野々村仁清のところで修行した陶工。この人の作品は写真と実物が本当に違う。織部っぽいラフさが漂う絵付けに惑わされて、胎の方に「もったり」した印象を持ってしまうのだが、実物を見ると仁清仕込み(?)の薄手繊細な仕事ぶりに驚くことになる。実物を見るのは初めてではないが、その度に、自分の記憶にある質感を改めさせられる。(いいかげんにちゃんと記憶してもよさそうなものなのだが)

酒井抱一作《浪図屏風》(紙本銀地墨画著色 六曲一双》
 まさか、これを見ることができるなんて思ってもみませんでした(号泣)。玉蟲敏子氏の文献で見かけて、気になっていた作品。
 全面が銀色で覆われているが、薄墨で銀箔を貼り継ぎしたような調子を付けている。この仕掛けのおかげで、画面にリズムが生まれ、現代にも通用するカッコよさをかもしだしている。その銀地の上にほとんど墨一色で豪快に浪のみが描かれている。これまで見てきた抱一の作品は、隅々にまで神経の行き届いた繊細なタッチのものばかりだったので、一目見た時、光琳かと思ってしまった。思い切りの良さ、力強さ、奔放さというのは、私の中では光琳に属するキーワードだった(もっとも抱一様ご本人はかなり奔放だったりするのですが(^^;)それがひっくりかえってしまった。
 銀の上に描かれた力強い墨の線。波頭の胡粉の白、浪陰を彩る緑青の透明な青緑色。カッコよすぎです。これを眺めながら「岩崎さん(静嘉堂を開いた方)の家に生まれたかった」と思ってしまいました(ゴメンナサイ父上母上)。これを好きな時に好きなだけお座敷でみたい!!どんなシチュエーションで見たいかというと。
【その1】空気が澄み渡る秋あるいは冬の満月の夜、白砂の枯山水に面したお座敷。座敷には灯りを一切灯りを置かず、砂が反射する青い月明かりのみで見る。闇に浮かぶ銀の波!!
【その2】真夏、太陽が中天に輝き、真っ白な光が降り注ぐ頃、場所はやっぱり白砂枯山水付き座敷。まぶしい外と暗い室内のコントラストの中にゆらぐ涼しげな銀の波!!
基本は、白い光。暖かい色見だと銀の良さが減っちゃうような気がして(^^;
 ひとつ、ちょっとした疑問がある。銀というのは非常に酸化しやすい。すぐ真っ黒になっちゃうのだ。なのに、くもりひとつないこの屏風。いったい何でできているんでしょうか。まさかプラチナ?(^^;;だれか教えて!

酒井抱一作《絵手鑑》(紙本・絹本著色水墨等 一帖七十二図) 
いろいろなモチーフを様々なタッチで描いているので、見ていて楽しい。こういう作品はぜきれば全ページみたいのだけど、そうもいかないのが残念。

鈴木其一作《雨中桜花楓葉図》(絹本著色 二幅)
其一らしい端正な植物の描写に墨で描いた雨が重なって風情のある作品。でも、最初見た時、薄墨で描いた雨を汚れと勘違いしてしまった(^^;;

点数は少なかったけど、とっても満足な展覧会でした。

|

« 雨なのに大旗 | Main | 新幹線に電源 »

「アート」カテゴリの記事

「展覧会」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16830/10033499

Listed below are links to weblogs that reference 「国宝 関屋澪標図屏風と琳派の美」
静嘉堂文庫美術館に行ってきた
:

« 雨なのに大旗 | Main | 新幹線に電源 »